おしどり夫婦T&A

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植え込み型補助人工心臓 出血が起こりやすい原因は?フォン・ヴィレブランド 動静脈奇形が原因 おしどり夫婦 T&A day15

こんにちは、おしどり夫婦 T&Aです。前回のブログでは、植え込み型補助人工心臓埋め込み時の有害事象である大量出血が引き起こされる確率について学習しました。大量出血は、1年間で約20%の確率で起こっていることが判明しました。まだ、チェックされていない方は、アクセスをお願いします。

本日は、VAD埋め込み時に発生する消化管出血や他出血がなぜ起こるのか?原因に注目して学習を進めていきます。

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VAD 出血 原因 おしどり夫婦 T&A フォン・ヴィレブランド因子 動静脈奇形

本日学習で学べること、目標は?
VAD留置時に発生する出血の原因について学ぶ


お断り

私の学習記録になっております。誤解を生むこともあるかも知れません。間違っていることを記載している場合はご指摘をお願いします。

有害事象:大量出血の定義は?

大量出血とは:死亡の原因となること、再手術、入院、輸血等を要する出血
定義に関しては、前回のブログでも触れているとおり、輸血を要する出血と記載されており、死亡、再手術、再入院した場合に大量出血とカウントされると考えられます。

出血が引き起こされる確率は、

消化管出血は、年間5%の割合
消化管出血以外は、年間18%の割合となっています。まぁ、高めの確率ではないかな?考えています。
また、VAD装着の重大な出血は、全体の約50%の患者に見られるとの報告もあがっている。

発症時期は?

術後30日以内が多くおよそ25%の患者で出血に対し外科的処置が必要になる

出血の種類は?

出血の種類(原因)は何があるのか考えてみましょう。
手術直後では、術後出血が原因として考えられます。術後出血の原因としては、留置部位、骨、大動脈へ人工血管を縫い付ける訳ですがその部位からの出血するリスクが考えられます。

術後管理としては、
ドレーンからの出血が多量であれば、輸血が必要ですし、再止血術にいくこともありえますね。また、VADの流量が確保できない場合など出血を考慮しましょう。
私の経験上、止血剤やFFP、PCを投与しても出血が止まらないことがあります。再開胸によるリスク(感染)もありますが、再止血術にいくことを早急に判断しなければならないこともあります。看護師は、術後管理する際は、スワンガンツのCIやVAD流量、ドレーンの量やINR値を総合的に判断しモニタリングを行いましょう。

VAD留置患者がなぜ出血が引き起こされやすいのか?

まだ、消化管出血の原因は完全に解明はされていません。今現在で分かっている範囲で解説します。

出血の根本的な原因は2つ

VAD留置に伴い血液は定常流の血流となります。特に第二世代(HM2、JAVIK2000、EVA heart)通常、人体は心臓の拍動により収縮期・拡張期で脈圧が作られていました。しかし、定常流になることで人体に影響が及ぼされることが明らかとなってきています。まずは、どれほどの影響があるのか確認をしてみましょう。

定常流は拍動流式よりも出血率が高い!!

定常流と拍動流式を比較し、出血率を比較した研究では、
拍動流式では、10%、定常流では、18%の出血率となって高い発生率となっています。
また、再出血率は35%とこれも非常に高い値となっていますね。

上記出血された方の75%は上部消化管と言われています。

看護師の方は、患者さんの排便色やHbの推移に注意した方が良いですね。

動静脈奇形が起こる原因は??3つ

①内皮細胞におけるangiopoietin-2産生の増加による血管新生が消化管の動静脈奇形を惹起すると言われています。
②定常流サポートにより生じる脈圧の低い状態により、交感神経の緊張が高まり、血管平滑筋の弛緩が起き、細小動静脈が拡張すると考えられています。

動物実験レベルでは、定常流の血流では、平均血圧が保たれていたとしても細小血管では低還流になっており局所的な低酸素状態が起こり、血管の拡張、血管異形成が起こると言われています。

動静脈奇形が起こる原因は、現時点では3つでした。

せん断力による影響は?

せん断力(shear stress)の亢進によるフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor:vWF)の構造が変化する

フォン・ヴィレブランド因子の役割は?

フォン・ヴィレブランド因子は、血管障害部位における血小板凝集を助ける働きがあります。さらに、血漿中で第Ⅷ因子の運搬作用を持ち、蛋白分解から保護することにより、血流中の第Ⅷ因子の量を増やし血管障害部位での作用を助けている。

せん断力とは

ポンプは高回転することで血流の維持を図っています。そのため血液がポンプ内を通過する際に血液分子が分解されてしまいます。その結果、前述している通りフォン・ヴィレブランド因子の分子構造に変化が起こり、循環血漿中のフォン・ヴィレブランド因子の多量体が減ってしまうことで後天性フォン・ヴィレブランド病が起こると考えられています。

結果、消化管出血や頭蓋内出血を引き起こす原因となります。かつ、PTINRは正常値内で出血が起こる訳ですので非常に恐怖です。

ちなみに、PTINR正常値内の頭蓋内出血率は3-11%と言われています。

本日のまとめ

今回は、VADを埋め込まれた方は何故出血が起こりやすいのか?に注目し学習をしました。なぜ出血しやすいか?ざっくりとまとめると:ポンプ回転に伴うフォン・ヴィレブランド因子の構造変化による出血リスク向上、動静脈奇形が起こるためと考えられています。
以下は本日の学習ポイントとまとめています。


復習ポイント

大量出血の定義は、死亡の原因となること、再手術、入院で輸血等を必要とする出血

消化管出血の年間発生率は5%

消化管出血以外の年間発生率は18%

全体の50%で出血が起こるともいわれている(埋め込み中)

術後30日以内で外科的処置が必要な患者割合は25%

定常流式は、18%で出血が起こる。

拍動流式は、10%で出血が起こる

出血の75%は上部消化管出血

動静脈奇形が起こる原因は、angiopoeitin-2産生の増加→血管新生→消化管の動静脈奇形を惹起する

定常流→低い脈圧→交感神経緊張亢進→血管平滑筋の弛緩→細小動静脈が拡張

細小血管の低酸素状態

せん断力→フォン・ヴィレブランド因子の構造変化

フォン・ヴィレブランド因子の役割は、血管障害部位における血小板凝集を亢進、第Ⅷ因子の運搬作用

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